E-journal GEO
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解説記事
『山田町震災記録誌』制作を通した自然災害認識への地理学的アウトリーチ―避難行動をパーソナル・スケールの時空間情報として再現する―
岩船 昌起田村 俊和
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2018 年 13 巻 1 号 p. 184-201

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抄録

自然災害の認識の向上に関する地理学的な「アウトリーチ」の一環として,岩手県山田町で『東日本大震災記録誌』の制作に携わった.筆者らが構成・執筆した『津波の来襲と避難』の節では,次を試みた.避難行動については,的確な時空間の表現に不慣れな被災者から聞き取った経路や時間推移の情報を鍵に,地図に表し,津波高の推移と重ねた時間–位置図表に整理した.そこには,移動経路がパーソナル・スケールで時空間的に復元されており,避難者の思いや判断を地点ごとに対照できる.一方,日常生活が営まれ,避難行動が具体的に展開された各地区で,避難に関わる“地域性”あるいは“環境特性”を整理して記載した.このような,いわば地理学的な手法で体系化された情報は,後世や他地域の人が避難行動を追体験し,学校や地域社会で防災・減災教育を進めるために,さらには集落移転を含む長期的な地域計画を考える際にも,有用な資料となることが期待される.

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© 2018 公益社団法人 日本地理学会
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